後藤 慎吾
- UPDATE
- 2022.06.29
その他
可塑性
最近はご無沙汰しているが、若いころは時折少年事件を扱った。
年齢や事件の内容などにもよるが、少年事件は、20歳以上の成人の刑事事件と異なり、弁護士は、「弁護人」としてではなく、「付添人」として活動を行う。また、刑事裁判所の公開の法廷ではなく、家庭裁判所の非公開の審判廷で審判が行われる。裁判所が下す決定も「判決」ではなく「保護処分」であり、その内容は、刑罰ではなく保護観察や少年院送致などである。
このように少年と成人とで違いが生じる理由の一つに、少年には「可塑性」があることが指摘される。広辞苑をみると「可塑性」とは「変形しやすい性質」をいうとされている。少年事件との関係では、少年は、成人に比べ、教育や環境調整次第で立ち直りを期待しやすいという意味で用いられる。
私が大阪で司法修習をしていたとき、泊りがけで少年院を訪れ、少年たちと生活を共にするというカリキュラムがあった。夏の盛りに、少年たちと農作業や運動をして一緒に汗を流したのを覚えている。私の前にいる彼らは、実に無垢な少年たちであった。私は少年の「可塑性」をそこに見た思いがした。
今年は、記録的に早く梅雨が明けた。彼らは今どうしているのだろうか。夏の青空の下で見た少年たちの日焼けした笑顔がふと脳裏に浮かんだ。