荒巻 慶士

UPDATE
2024.11.22

その他

ルールの軽視、倫理の無視

 最近驚いたことは、数々の違法行為で起訴された身でありながら、ドナルド・トランプ氏が再度、米大統領に選ばれたことである。日本では、政治資金の問題を抱えた自民党が総選挙で敗北したことに国民の良心の一端が現れたかと思いきや、ここへ来て兵庫県知事選で斎藤元彦氏が当選したので、改めて驚いた。県議会に百条委員会が設置されること自体そうある事態ではなく、その調査状況によればパワーハラスメントの疑いが強いことが明らかであるからだ。

 

 ルールに対する意識の弱まりは危険水域にあるかに見える。ルールを取り巻く職業倫理などは無視に近いか。ルールを守ることは最低線であり、政策はそれを守った上での是非論であろう。権力を持つ者のルール違反を是認すると、その権力行使は手段を選ばないことになり、弱肉強食の世界が現れる。

 

 わが法曹界に目を向けると、金融庁に出向中の裁判官によるインサイダー取引が強制捜査を受けたところであり、元検事の弁護士が準強制性交罪で起訴された。検察は過去には証拠を改ざんするという事件を起こしている。違法を監視する立場の者がルール違反をしているようでは、法の支配もがたがたになる。

 

 いったいだれがルールなど守るのかという事態は困る。常識を常識といえる世の中、子どもに常識を語れる世の中でありたいものである。

荒巻 慶士

UPDATE
2024.09.23

その他

定年なき世界

 敬老の日を機に、65歳以上の高齢者の就業者数が過去最高を更新したとの報道に触れた。年々増加しているという。今後もこの傾向は続くだろう。

 足元で高齢者を巡る法律相談が増えている。障害者や女性に関わる相談もしかり。だれもが区別なく働ける社会が志向されている。

 

 使用者には現在、65歳までの雇用が義務化されている。令和3年からは、70歳までの就業確保措置が努力義務とされた。多くの法制度が努力義務を経て本格義務化されており、70歳までの義務化が視野に入っている。定年制の全面廃止も遠くない将来に、おそらく実現するだろう。

 

 定年なき世界がうまく回るためのポイントを考えてみたい。

 まず、就労したい高齢者の取り巻く環境は人それぞれであるから、働き方の選択肢が多く確保されることだ。また、健康状態など変化に応じて、働き方を変えられることが望ましい。

 他方で、使用者の利益も考慮して、処遇を中心とした労働条件については、働きに見合ったものであるべきだろう。けれども、働きがいを感じる待遇ではあってほしい。このあたりの思い違いをなくすためには、雇用に当たって、十分な説明と納得を踏まえた合意が重要だと思う。

 大切にしたいのは、リタイアの時期を自分で選べるということだ。経済的な労働の強制になることは避けなければならない。就労・稼得により年金を減らさないことも必要だ。

 

 かつては一律引退が当たり前だった。父は、いよいよ「サンデー毎日」、と笑っていたものだ。ある意味お気楽であったが、複線的なシニアライフが楽しめる世界は素敵である。 

荒巻 慶士

UPDATE
2024.07.17

その他

猫の話

 能登半島地震から半年として、石川県輪島市の漆芸家桐本滉平さんがラジオのインタビューに答えていた。集落は復興が進んでいるが、離れたところではインフラが戻らず、放置されたままの民家も多くあるという。

 自身の工房兼自宅も、当時、交通が途絶え、戻れた時には飼い猫3匹のうち2匹が犠牲になっていたとのことだ。被災地域には、未だに消息不明の猫たちが数多くいて、飼い主らによる所在探しの活動にも関わっていると話していた。

 

 民法の世界では、猫=ペットは物であり、所有の対象にすぎないが、今の社会の感覚では、これをはるかに超えて、家族として人並みの地位を得ていて、ペットを巡る法律問題・紛争もざらにある。ペットの尊厳とか、人格的存在という言葉もそれほど奇妙に聞こえない。

 

 債務整理の依頼者の家計で、光熱費がやけに高額なので尋ねると、ペットのために外出中もエアコンはつけたままなのだとのこと。この暑さなので「生命の尊厳」を守るためやむを得ない。

 散歩中に犬のリースを引く男女が、〇〇ちゃんパパ、✕✕くんママなどと呼び合う光景はまったく珍しくない。

 

 知人の話してくれた相続財産清算人のこんな経験談も思い出す。

 一人暮らしの飼い主に死なれてしまい、発見に時間がかかった。その間に猫の食べ物がなくなってしまった。飼い主は、自らの肉体で猫の命をつないだというものだ。

 

 そういえば、先ごろ亡くなったフジコ・ヘミングさんは、猫好きでたくさんの猫に囲まれて暮らしていたとのこと。生前、自身の死後の猫たちの境遇を気にかけていたとも聞く。その後の成り行きが気になったりもする。

 

 私自身は猫を飼ったことはない。かつて寸前まで行ったことはある。

 記者時代にいわゆる夜回りから帰宅すると、いつも玄関先で待っている猫がいた。ドアを開けると、するりと中へ入ってくる。当時、駆け出し2年目で、ペット禁止の借室住まい。お世話する余裕はなかった。

 

 次々思い出される猫の話。ねこ、ネコ、猫…、書き方でなんだか想起する姿も変わる。猫の魅力のなせる業だろう。

 

 

 

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