
後藤 慎吾
- UPDATE
- 2025.02.28
その他
正義
弁護士法1条1項は「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」と規定している。しかし、弁護士が実現するべき正義が何であるかは難しい問題である。
私が普段仕事をしているときには、法令やそれを解釈した判例の規範に照らして事案を分析すれば足り、法令や判例が正義にかなうものであるかまで考えることは少ない。本来、法令や判例は正義を具体化するべきものだからだ。しかし、このような前提が妥当しない場合もある。
最高裁は、昨年言い渡した旧優生保護法違憲判決において、不法行為によって発生した損害賠償請求権の除斥期間を定めた改正前民法724条後段の規定について従前採用していた法理を維持した場合には、「著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することのできない結果をもたらすことになりかねない。」と判示して、過去の判例を変更した。
この判決は、法令や判例があるからといって思考停止してはならない場合があることを示している。弁護士は、その使命を果たすため、法の世界における常識を疑い、正義とは何かを探求する姿勢を持つことの重要性を忘れてはならない。