後藤 慎吾
- UPDATE
- 2024.04.22
その他
カラマーゾフの兄弟
ドストエフスキーの最後の作品である「カラマーゾフの兄弟」は世界文学史における最高傑作のひとつであるといわれる。
私は、若いころに何度か「カラマーゾフの兄弟」を読もうと試みたことがあったが、すべて途中で放り出してしまっていた。先月、この作品が私の書棚の片隅にひっそりと置かれているのに気づき読み始めたのだが、今回は最後まで読み通すことができた。
過去と今回とでは何が違ったのだろうか。
思い返せば、若いころの私の人生に対する態度は無邪気だった。人生の苦悩のようなものをほとんど感じることもなく、ただ無邪気に生きていた。他方で、年齢的に人生の折り返し地点をとうに過ぎた今は、そういうわけにもいかず、この作品から、人生に対する態度を学び取りたいと考えたのが読書のモチベーションになった。
結局のところ、当時のロシアの世相やキリスト教に関する知識のない私が、「カラマーゾフの兄弟」をどこまで理解できたのかは心もとない。それでも、この作品の登場人物が抱える苦悩や煩悶、それに対する救いや人間が持つ尊厳の描写を通じて、ドストエフスキーの世界観や人間観の一端を知ることができたのはよかった。2000頁もある作品なので覚悟が必要だが、またいつか読み返したい。