荒巻 慶士
- UPDATE
- 2023.01.31
その他
年初にあたって
正月早々、帰省先を巻き込んで家族で大かぜをひいた。幸いコロナではなかったものの、高齢の両親は病院で薬をもらうにも一苦労。コロナ感染の疑いから、あちこち受診先を問い合わせ、ようやく予約は取れたが、駐車場の車中で長時間待たされるという事態となった。
コロナも〝普通のかぜ〟になっていきつつあるが、流行の波に合わせて、今後も神経質な対応を迫られることになろう。昨年は、感染拡大のあおりを受けた会社の倒産申立てを受任した。ウェブ会議やリモート勤務も定着してきて、非接触型の社会へと傾斜しているが、メンタルヘルスやコミュニケーション不足によるトラブルなど、労働相談においても、負の側面が顕在化している。
ウクライナや台湾などをめぐるロシア・中国といった海外の覇権国家との対立の先鋭化は、物価の高騰や防衛力強化のための増税など、国内問題として身近に影を落とし始めている。
法曹に身を置く身としては、憲法9条の行方が気がかりだ。攻撃的に接すれば、攻撃的な対応が返ってくるのは、紛争の現場で見てきたありふれた光景である。軍事力を増強すれば、同様の反応があり、当初の増強で終わらないのは当然であろう。軍拡を競う前に、こうした国家に対するこれまでの対応に問題がなかったのか、顧みる論説は多くないように思う。
もう一つの気がかりは、法曹三者、つまり裁判官・検察官・弁護士の志望者が減っているということだ。司法試験の合格率は、かつて2、3パーセントだったが、今は40パーセントほどである。それでも、以前年に3万人いた受験者は3000人程度だという。
司法は国家の骨格で、細ると軟体動物のように、捉えどころのない、行き当たりばったりの弱肉強食社会となる。事件の現場では、同業者の振る舞いなどから、弁護士の仕事のサービス業化とともに、公正や正義の側面の弱まりを感じる局面が増えてきたように感じる。時間とお金をかけてロースクールで学んでも、法曹となる保証はなく、経済的にも報われないとするなら、志望者が減るのもわからなくはない。
理系人気も理解できるが、司法は社会の正義・公正を担保する国家基盤であり、その重要さを社会全体で確認したい。弁護士の仕事に誇りを持ち、改めてその振る舞い様にも心したいと思う。
遅ればせながら、年初に当たっての所感である。