荒巻 慶士
- UPDATE
- 2021.05.28
その他
司法委員に着任して
今年から東京簡易裁判所で司法委員の仕事を始めた。
司法委員は、裁判所の非常勤職員の立場で、民事訴訟の審理に立ち会う。裁判官に意見を述べたり、和解の協議を進めたりするのが職務だ。弁護士が多いが、弁護士とも限らない。普段の業務では、原告・被告という当事者の代理人の立場で出廷することが多いが、審理を執り行うという裁判所の立場で訴訟に関与することに、新鮮な思いをしている。
代理人として出廷しても、自身の担当事件が終われば、その場を離れる。司法委員は、その日予定された事件に軒並み携わることになる。
簡易裁判所には、貸金を初めとして数多くの事件が提起されて、大量の案件を手際よく処理することが求められるが、他方で、弁護士が代理せず、当事者自ら対応するケースも少なくなく、本人が出頭している場合には、裁判官は丁寧に説明し、また、送達など手続の適正にも配慮する必要があり、大変な業務だと改めて実感する。
代理人としては当事者と同化して目が曇りがちになる主張・立証の状況も、中立的な裁判所の立場だと判断しやすい。双方代理人の立ち居、振る舞いもよく見えるものだ。こうした状況で、裁判官に意見を述べたり、弁護士として感じられる、書面や法廷で現れにくい当事者の〝本音〟を裁判官に伝える際にも、やりがいを感じている。
和解の成立に向けて尽力することは司法委員の大きな役割の一つだ。こまごまとした事案も多い簡易裁判所の訴訟において、適正な条件で早期解決を図りたいという当事者の期待を感じることは多い。公平に臨み、適切な基準を示しつつ、落着できるよう信頼に応えていきたい。