後藤 慎吾
- UPDATE
- 2018.08.27
その他
民法改正とノスタルジア
今月、私が監修した民法(債権関係)改正に関する記事が創業手帳Webというウェブサイトに掲載されました(https://sogyotecho.jp/civil-law-amendment/)。民法の債権関係の規定は、同法の制定以来約120年の間、ほとんど改正されることはありませんでしたが、昨年5月にこの分野の全面的な見直しを目的とした改正法案が成立し、2020年4月1日に施行されることになっています。
随分と昔の話になりますが、私が司法試験の受験を決意して法律の勉強を始めたころの民法の第1編(総則)・第2編(物権)・第3編(債権)は、片仮名・文語体で表記されていました。例えば、民法第1条第1項は「私権ハ公共ノ福祉ニ遵フ」、同条第2項は「権利ノ行使及ヒ義務ノ履行ハ信義ニ従ヒ誠実ニ之ヲ為スコトヲ要ス」といった具合です。初めて六法全書を開いたときに目に飛び込んできたこのような難解な条文の表記方法に面食らったのをよく覚えています。戦後、新たに制定する法律はすべて平仮名・口語体で表記されるようになりましたが、明治29年に制定された民法の第1編から第3編については平成17年まで片仮名・文語体の表記が維持されていました。今は、民法の第1編から第3編も現代語化されており、民法第1条第1項は「私権は、公共の福祉に適合しなければならない。」、同条第2項は「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」と規定されています。
今回の民法の債権関係の規定の改正項目は200程度あり、非常に広範なものになっています。弁護士が仕事をしていくために民法の理解は必須であり、私も時間を見つけて改正民法の勉強をしているところです。司法試験の勉強をしていたころは毎日のように民法の基本書を読み込んでいたものですが、弁護士として仕事をするようになってからは、依頼を受けた案件を解決するために必要な限度で民法の条文や関係する文献を検討することはあったものの、民法について網羅的・体系的に勉強することはありませんでした。今、個別の案件から離れて改正民法の勉強をしていると、法律家になることを夢見てあの難解な片仮名・文語体の民法と日々格闘していた若かりし頃の自分を思い出し、少しセンチな気持ちになったりしています。