後藤 慎吾

UPDATE
2024.10.22

その他

死について

今年の夏に母校の早稲田大学高等学院で「法学特論」という授業を担当する機会があった。受講生の3年生たち(この学校に通う生徒を校内では学院生という。)は、あまりに若く、まぶしかった。そういう彼らと今の私の違いは何かと考えたときに、それは「死」に対する感覚の違いなのかもしれないと思った。 

 

私は、高等学院に通っていた当時は自分の死が想像できなかった。至極当然のことだが、これまでに死ななかった人はいないし、当時も毎日のように訃報のニュースを目にしたはずだが、いつも他人事のように感じていた。なので、授業の冒頭で彼らに「君たちは永遠に生きると思っているんじゃないか。」などと挑発的なことを言ってしまった。 

 

私は、4年前に母を亡くした。母の死は、私にとって、人の死がどのようなものかを理解した初めての経験だった。そして次は私の番なのだと思った(父はまだ健在だが)。 

 

授業の最後に、学院生たちに私が好きな坂本龍一が生前好んで使っていた「Art is long, life is short.」という言葉を送った。これはヒポクラテスが医師を志す若い医学生に言った言葉で、坂本は芸術の意味で用いていたが本来のArtは技術(医術)という意味なのだという。人生の過半をとうに過ぎた私には身につまされる言葉だが、若い彼らにどこまで響いたのかは定かではない。大人になってようやく理解できることは多くある。死もそのうちの1つなのだと思う。 

荒巻 慶士

UPDATE
2024.09.23

その他

定年なき世界

 敬老の日を機に、65歳以上の高齢者の就業者数が過去最高を更新したとの報道に触れた。年々増加しているという。今後もこの傾向は続くだろう。

 足元で高齢者を巡る法律相談が増えている。障害者や女性に関わる相談もしかり。だれもが区別なく働ける社会が志向されている。

 

 使用者には現在、65歳までの雇用が義務化されている。令和3年からは、70歳までの就業確保措置が努力義務とされた。多くの法制度が努力義務を経て本格義務化されており、70歳までの義務化が視野に入っている。定年制の全面廃止も遠くない将来に、おそらく実現するだろう。

 

 定年なき世界がうまく回るためのポイントを考えてみたい。

 まず、就労したい高齢者の取り巻く環境は人それぞれであるから、働き方の選択肢が多く確保されることだ。また、健康状態など変化に応じて、働き方を変えられることが望ましい。

 他方で、使用者の利益も考慮して、処遇を中心とした労働条件については、働きに見合ったものであるべきだろう。けれども、働きがいを感じる待遇ではあってほしい。このあたりの思い違いをなくすためには、雇用に当たって、十分な説明と納得を踏まえた合意が重要だと思う。

 大切にしたいのは、リタイアの時期を自分で選べるということだ。経済的な労働の強制になることは避けなければならない。就労・稼得により年金を減らさないことも必要だ。

 

 かつては一律引退が当たり前だった。父は、いよいよ「サンデー毎日」、と笑っていたものだ。ある意味お気楽であったが、複線的なシニアライフが楽しめる世界は素敵である。 

後藤 慎吾

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2024.08.19

その他

ダイエット~シーズン2~

昨年の8月のコラムでダイエットをしたことを書いた(2023年8月コラム「ダイエット」)。読み返してみると、私の体重は78キロから64キロになったそうだ。ただ、そのコラムの最後では「ダイエット期間が終了してからは食生活の「痩せ活」のいくつかはもうやっていない。酒を飲み、おいしいものを食べるのは人生の楽しみの1つだ。やっぱりこれだけはやめられそうにない。で、あれだけ苦労して減らした体重は着実に増加中だ。」と開き直っているが、その結果、今年の6月の初めに体重を量ったら77キロまで戻っていた。

 

裁判官・検察官・弁護士になるには司法修習を修了する必要があるが、司法修習修了後10年ごとにパーティーをするのが習わしになっている。私の修習期の20周年のパーティーは、本来は去年行われるはずであったが、コロナの影響があって今年の8月末に京都で行われる。このだらしない体で旧友と11年ぶりに会うのも気が引けるので、6月の中頃から、昨年同様、2か月間のダイエットを行った。

 

結果は12キロ減の65キロ。昨年の経験もあるので、1日の食事内容や運動量から翌日の体重の増減がある程度予測できるようになった。ただ、飲み会や依頼者などとの会食は要注意で、アルコールも入るからついつい食べ過ぎてしまい、体重が予想外に増えた。あるときは1日で2キロも体重が増えて驚いた。昨年・今年のダイエットの経験でわかったことは、自分の好きなように食事をすると確実に体重は増加するという悲しい現実だった。

 

先日、妻とスーパーに夕食の買い出しに出かけた際に、1袋5キロのお米が山積みになっていたので、2袋を持ち上げてみた。ずしりと重い。こんな重量の脂肪を余計に身に纏っていたのかと思うと辟易した。意志薄弱な私のことなので、いつまでこの決意が継続できるかは定かではないが、今は、この体重を(できるだけ)維持していこうと思っている。

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